リトルニコ爺の手記

わかばだいとかいうハンネでTwitterをやってる人が昔やってたYahoo!ブログから引き継いでリスタートした沼みの深いブログ。

機材紹介:Nikon 1 V1

少々茶番にお付き合いください。

 

『フラッシュ外付けのニコンのミラーレス』

「時期的にZ 8かな?」

『グレードとしては小型軽量で』

「Z 8っぽいな……」

『専用のグリップが用意されてる』

「Z 8だな……」

『電池はEN-EL15系で』

「Z 8ですねこれは」

ニコン1マウント』

「V1じゃねぇか」

 

……というわけで、絶妙な性能のNikon V1を中心にシステムを組んでいきます。まずはボディ。

Nikon V1

Nikon V1
型式 レンズ交換式デジタルカメラ
マウント ニコン1マウント
有効画素数 10.1MP
撮影素子 13.2mm * 8.8mm CMOS
記録媒体 SD, SDHC, SDXC
シャッター 電子制御上下走行式フォーカルプレン/電子
SS メカ:1/4000〜30",B,T X=1/250" 電子:1/16000〜30",B,T X=1/60" タイムはリモコン使用
連写速度 メカ:最大5fps 電子(Hi):最大60fps
感度 ISO100~3200相当(1段増感可)
AF ハイブリッドAF(位相差/コントラスト)

Nikon 1 V1 - 主な仕様 | ニコンイメージング より抜粋

 

ニコン初のEVFつき像面位相差AF搭載ボディです。マウントはニコン1でいろいろと古いですが、1マウントボディの中では唯一メカニカルシャッターを搭載したVシリーズに属する上位機種です。完全電子マウント・STMの採用・EVF(レンズ交換式一眼)・ハイブリッドAF等Zシリーズに通ずる技術がふんだんに搭載されており、ロマンあふれる一台です。

D600(EN-EL15b)/V1(EN-EL15)

しかも、バッテリーがEN-EL15シリーズです(さすがにcは対応していないらしい)。その気になればZ 8ともバッテリーが共用出来ます。現実的にはD600だとかが軒並みEN-EL15シリーズなので、そこらへんのボディと共用することになりそうです。USB-C給電なんてない(どころかUSB-Cそのものが画定されていない)時代ですので、予備バッテリを持って置けるのは安心できます。

ニコン1マウントボディながら、EN-EL15シリーズを使っているというだけありバッテリー込の重量や大きさはそこそこあります(それでもFマウントボディよりは相当小さいです)。厚みがあるので単体でもそこそこ握りやすいのがJ1との大きな違いだと感じます。

Zボディと同じ像面位相差AFとコントラストAFとのハイブリッドなので、AFはそこそこスピーディです。AFモーターもZと同じSTM(ステッピングモーター)で高速です。あとSWMよりは故障しにくいんじゃないかな。

 

www.nikon-image.com

ニコワンをやるならシステムまでそろえたいところ。ちょこちょこデッドストックがあったりするので楽しいです。高いけど。

フラッシュは内蔵していないです。その代わりスピードライトSB-N5とN7が用意されています。SB-N5が当時の組み合わせ。専用のシューなので汎用のスピードライトは使えない(シューだけならアダプタが用意されていますが連動はするんでしょうか)というちょっと面倒な仕様です。この点においてはJ1のほうが便利ですね。

背面

まあでも最大の特徴はEVFが載ってる点だと思います。ちゃんと写真をやりたいならニコワンとて必要不可欠ですね。背面LCDじゃ集中できない場面もあるでしょうし、しっかり構えればブレ防止にもなります。文字のドットは大きいですけどそれなりに見やすいですね。ちゃんと十字線とかも表示できます。

Nikon V1/Nikon J1

V1/J1 天面

UIはJ1と瓜二つです。というかJ1にEVFとフォーカルプレンシャッターつけてフラッシュを外付けに変えたのがV1と思っていいです。ダイヤルでは撮影モード設定ができないのが地味にストレス。コマンドダイヤルの代わりのやつも最良の使用感ではないです(酷評するほどでもないかな)。

V1/J1 背面

面倒なのはAF。これもJ1と同じで、中央一点かオートしか選べないのが厳しいです(ちなみに一応MFも選べます)。幸いJ1ではフラッシュの設定に飛ぶ十字キーの「下」がV1ではAF設定になっているので、若干扱いやすくなっています。とはいえなぁ……

J1と違ってV1はメカシャッターが稼働するので「撮った」感がしっかりあります。わずかな振動はありますが一眼レフのようなミラーの動作はないのでほとんど揺れません。ここらへんはミラーレスの利点かな。

 

総評すると、V1はEVF・フォーカルプレンシャッター・外付けスピードライト接点を備えたJ1といった感覚で(例えるならD3000代とD5000代の関係)、D7000代程度の操作性はV2にお預けになります。他はなんでもいいけどどうしてもファインダーがほしい!という人向けです。

 

次回からはこれにいろいろつけていきます。お楽しみに。

使用雑感:Zoom-NIKKOR.C Auto 1:3.5 f=43~86mm

こんにちは。緑つり革のわ か ば だ いです。C102お疲れ様でした。

C102の新刊、千夜一夜本2の巻末で仄めかした通り、43~86(ヨンサンパーロク、ヨンサンハチロク)の描写に関して、作例とともに改めてまとめてみたいと思います。

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2065272

新刊はメロンブックスに委託しております。よろしければお手に取ってご覧ください。

 

Zoom-NIKKOR Auto 1:3.5 f=43~86mm

Zoom-NIKKOR.C Auto 1:3.5 f=43~86mm

www.nikon-image.com

言わずと知れた「ヨンサンパーロク(ヨンサンハチロク)」、国産初の標準ズームレンズです(正確にはニッコールの3.5~8.5cmF2.8~4がこれより先に発表されましたが残念ながら発売されませんでした)。凸群先行三群ズームで、第二群がズーム中固定となっておりカムの簡略化を図っています。とにかくたくさん売れたレンズです。

レンズ Zoom-NIKKOR Auto 1:3.5 f=43~86mm
発売年月 1963.1
型式 ニコンFマウントズームレンズ
焦点距離 43~86mm
レンズ構成 7群9枚
ズーム構成 凸凹凸
焦点距離目盛(mm) 43 50 60 70 86
最短撮影距離 1.2m
簡易マクロ なし
最小絞り 22
アタッチメントサイズ 52mm
全長 7.1cm
質量 410g
フード HN-3

 

絞りブラケティング

今回は「絞りブラケティング」を用いて描写特性を探ってみました。絞りブラケティングとは、文字通り同じ構図で絞り値だけを変えて(連動してSSやISOも変わる)撮影する方法で、普通はあんまりやらないと思います(よくやるのは露出ブラケットとかSSブラケットとか)。絞りによる描写の変化を見るには当然ながら最適な方法です。

 

描写

改めて使ってみると、やはり結構暴れるなという感じですね。ただ、傾向をとらえることで手懐けることができます。

先に言っておくと、このレンズが最高の光学性能を発揮するのは焦点距離50-70mmの撮影距離3m前後です。(千夜一夜の記事中でそう語られています。)

Nikon D600 + Zoom-NIKKOR.C Auto 1:3.5 f=43~86mm
f/3.5 1/200 86mm ISO800

テレ端開放至近です。よく言えば幻想的な写りですね。中央は比較的芯がありながらもフレアがちな描写で、像高が増すと倍率色収差が載ってきます。ボケもなんというか安っぽく、周辺減光もかなりがっつり出ています。いわゆる「日の丸構図」専用のような描写になります。

f/5.6 1/100 86mm ISO400

クリックはf/4にもありますが5.6で。今回は3.5と5.6と11に絞って撮影しています。

中央部のフレアがなくなり一気に目が良くなったように感じます。周辺の光量落ちも四隅だけになりました(それでも気になる)。ぼけ味の倍率色収差は当然なくなりません。

f/11 1/100 86mm ISO1600

f/11まで絞れば大分安定してきます。被写界深度が深くなって、ピントが入っている域の中でも倍率色収差の影響が出ています。ちなみにテレ端でf/11だと無限遠から10mまでピントが合います。周辺減光はなくなりました。ただなんか周辺が流れてる気がしますね。

 

f/3.5 1/320 60mm ISO800

f/5.6 1/125 60mm ISO800

60mmで至近からやや離れたあたりです。f/11は誤って消してしまったので開放とf/5.6でご容赦ください。

上でも述べた通り、このレンズの最高のパフォーマンスが見られるポジションというだけあり、先ほどとは打って変わって安定した描写になりました。解放ではピント面でのフレアが目立ちますが解像感はしっかりあり、f/5.6でかなり改善されます。ピント面の色収差も縦横共に開放からほぼ出ていないように見えます。開放での後ボケは二線ボケや軸上色収差の影響があり完璧ではないですが絶望的ではなく、ギリギリ許容範囲といったところでしょうか。f/5.6に絞り込めばボケ量が抑えられ自然になります。開放ではやや周辺減光が認められますが、f/5.6でほとんど目立たなくなるでしょう。絞って変わらない収差として歪曲収差はそれなりの量糸巻きの形で出ています。

つまり、このポジションでは結構使えます。

 

f/3.5 1/320 86mm ISO400

テレ端での歪曲収差の量を見ようとした作例ですが、いろいろ出てますね。撮影距離にかかわらず、テレ端では結構暴れるようです。光学系の対称性が失われているので当然といえば当然なのですが、改めてみるといろんなものがたくさん出ています。

f/5.6 1/125 86mm ISO400

f/11 1/125 86mm ISO1600

周辺減光は改善されますが、絞ってもヤバイものはヤバイようです。

 

f/3.5 1/500 43mm ISO400

ワイ端です。像高が高くなくてもしっかりと樽型に歪みます。周辺減光もしっかり出ています。サジタル像面とメリジオナル像面が合っていないのでしょうか、解像感もなんとも言えません。点光源もすごい形してます。撮るのを忘れましたがボケも安っぽくなりそうです。

f/5.6 1/320 43mm ISO400

f/5.6に絞ると解像感が目に見えて改善します。周辺減光も緩くなりますがそれでも四隅で急落します。

f/11 1/80 43mm ISO400

光量が画面全体でほぼ均一になり、点像も良くなりました。ただ画面全体の解像感は未だイマイチだと感じます。ブレかもしれないですが、焦点距離43mmに対してSSが80あるのでブレじゃないかもしれないです。やはりワイ端でも光学系が非対称になるので仕方がないのでしょうか。

 

f/3.5 1/640 70mm ISO400

描写が良くなる70mmの3mくらいでの作例です。ピント面の解像感は物足りなさもありますが、このレンズの中ではかなり良いと言えます。後ボケはよく見ると二線ボケの傾向がありますが許せる量だと思います。よく見ると糸巻き型の歪曲が出ています。多分歪曲収差が出ないようにするには50mmくらいで撮る必要があると思います。あまり気になりませんが当然周辺減光もあります。

f/5.6 1/250 70mm ISO400

後ボケの二線ボケ傾向はよほど点光源ばかり写さなければ気にならないでしょう。デジタルで撮ってるから解像感が足りないように思いますが、フィルムで撮る分にはもうフィルム側の性能の上限くらいまでは解像してると思うので、当時としては十分な性能だったのではないでしょうか。ただ同じ年代でも単焦点レンズなら現代でも通じるレベルで解像してきたりする(フレアが出たりはあるけど)ので、そこらへんはやはり黎明期ズームです。というかそもそも43~86って廉価機向けズームですから。

f/11 1/50 70mm ISO400

絞っても劇的に解像度が上がるわけではないですが、国内初の標準ズームであることを踏まえればかなり健闘していると思います。しれっと周辺減光が無くなってますね。

 

総括

とにかくワイ端とテレ端は暴れます。そういう写真が撮りたいなら43mmと86mmの開放ばかりを使うと求める画が得られるのではないでしょうか。最短なら尚良し。

まともな画を求めるなら、先に述べたように50~70mmの3m周辺を使うことです。結構頑張ってくれます。歪曲を完全に取り去りたいならば50mm近傍あたりが良いと思いますが、ファインダーを見ながら調節すると間違いないと思います。

絞りの使い方ですが、解像感やボケ量も変わりますが最も大きく変わるのは周辺光量だと思います。どの焦点距離でもf/11まで絞れば全画面でほとんど均一になりますし、開放なら周辺の光量が大きく落ちます。日の丸構図で被写体を際立たせたいなら開放やf/5.6あたり、周辺までしっかり写したいなら絞り込む、という運用をお薦めします。というかあまりにも絞りによる周辺光量の変化の幅が大きいので気にせざるを得ません。ちなみに光量落ちは撮影距離が短いほど、また焦点距離が長いほど顕著です(つまりズーム第一群と第二群の距離が長くなるほど大きくなります)。

 

考察

43~86の光学ズームの仕組みは、凸凹凸の3つの群のうち、固定されている凹群に対して前の凸群を近づけるか後の凸群を近づけるかによって、前者ならレトロフォーカス的に、後者ならテレフォト的に作用させて、焦点距離を変化させているというものです。そもそもの構成は凸凹凸という美しい構成、すなわちトリプレット型を踏襲したものとなっているため収差補正には向いているはずですが、これを凹凸や凸凹のような形になるように移動させると、光学的な対称性が崩れ、結果的に収差の補正が難しくなっているのではないかと想像できます。したがって、凸凹凸の形が比較的キープされている中間焦点距離域では性能が良く、これが大きく崩れてほとんど二群構成のようになるテレ端とワイ端では性能も低下する、と説明することができます。凸凹凸三群構成ズームは、簡単な構成のわりに標準ズームを設計できる性能を確保できる反面、ズーム両端では性能が悪化してしまう諸刃の剣だったのです。

とはいえそもそもこの時代、今と比べれば光学設計は未発達で、特にボケまで意識して設計することは単焦点でも難しかったことが、当時の標準単焦点の写りを思い出せば良く分かると思います。ですからワイ端テレ端の写りも当時としてはそこまでのウィークポイントではなかったのかもしれません。周辺光量は覆い焼きをすればどうにかなりますし、そういった点も含めて考えるとこのレンズが「実用的」と評されるのも納得がいきます。つまり60年代前半時点では高性能ズームだった、のかもしれません。

 

このペースで書き進めていくと千夜一夜本2で触れたレンズの使用雑感を書き切るまでに何回コミケを挟むのかって感じもしますがちゃんと全部書き切ろうと思ってます。気長にお待ちください。それでは。

雑な宣伝(C102)

C101に続いて弊サークルがC102に参戦します。2023年8月13日@有明二日目(日)東Y02aでお待ちしております。多分東2ホール入ってすぐなのでアクセスはいいです。

 

trains552259.hatenablog.com

おまけ程度によわよわな前回のルポでも置いておきます。

 

サークルカット

新刊表紙(実際のものとは若干異なります)

vol.1(既刊)も多少は持っていきますが前回想像以上に出たので在庫僅少です。新刊は前回よりも多めに刷っているのでご安心ください。

内容は「MFズームニッコールの進化」と銘打った通り、MF時代のズームニッコール千夜一夜玉を取りあげ、スチル用ズームレンズの歴史をざっくり振り返る、というものです。特許漁ったり情報収集はそこそこ頑張ったと思います。サークルカットでF2縛りしそうに見せてますが全く関係ないです。

www.nikon-image.com

ちなみに表紙はAI Micro 105/4SにSoft 1をつけて撮影しました。カッチリすぎるよりいいよね。かといって解像感はしっかりしてるし。サークルカットのほうはD600に確か逆付けした43~86で撮ってたと思います。撮影倍率を稼げるのが利点ですが、2本のレンズの銘板両方にピントを持っていくのに苦心しました。PCレンズ欲しい。

 

最新情報は以下からどうぞ。

webcatalog-free.circle.ms

 

隣のサークル、二日目(日)東Y02bのふぉとぐらふぃあで頒布する合同写真集にも寄稿しているのでそちらもどうぞ。

 

以上、雑な宣伝でした。

パソコンのBluetoothの一件

カメラの話題ではないですが、ちょっとなかなかに骨が折れたお話なので、備忘録的に書き残しておきます。

 

今愛用しているノートPC、Let's Noteくんは中古(ジャンクではなくちゃんと保証付き)で購入したもので、購入時でも数世代型落ちしていたものです。CPUがintel core iシリーズ第7世代なので、ギリギリWin11に更新できないんですよね(第8世代以降が要件)。Win11アンチですが今のところ僕には関係のない話です。

閑話休題、このパソコン、購入時からBluetoothが使えませんでした。というか設定すらできませんでした。別の言い方をすると、Windows側からは「Bluetoothが搭載されていない」という見え方をしていました。Wi-Fiは使えていますから不便はしていなかったんですが、Bluetoothが使えないとたとえばワイヤレスイヤホンが使えなくなるわけで、地味に不便していました。

先日自分の中でBluetoothイヤホンを買う機運が高まって、そういえばと思って調べてみたところ、仕様表上はBluetoothが載っていることになっていました。しかしながら設定画面上では何も設定できませんし、デバイスマネージャを開いてもBluetoothの項目自体出てきていませんでした。設定からトラブルシューティングを回しても、アンテナがないよ的なことを返していました。はて……?

いろいろ検索してみて、パソコン本体の説明書にたどり着きました。pdfとかではなく、よくあるフリーソフトについているヘルプファイルみたいな感じのもの。全文検索もできます。これで調べてみたところ、『セットアップユーティリティの「Bluetooth」を[有効]にする』という項目が出てきました。要はBIOS(たぶん)から無線設定でBluetoothを「有効」にするということ。工場出荷時は「有効」のはずですが、その画面を出してみると「無効」になっていました。分かるか!!!

 

だから何だと言われたらそれまでですが、ネット上の解決策(ドライバを入れなおしてみたりもしてみました)も万能ではないなぁと思った一件でした。

 

以下駄弁ってるだけです。

Let's Noteいいよね。何が良いって、端子がたくさんついてるところ。自分のは世代が古いのでUSB-Cはないですが、LAN・VGAHDMIUSB3.0×3・3.5mmプラグ(IN/OUT)・SDカードスロットがついていて、特に外部ディスプレイ接続で困ることはほとんどないと思われます。VGAHDMIがあれば困ることはないです。これが最近のSurfaceシリーズなんかだと、薄く見せるためにUSB-Aが一つもなくて全部USB-C、しかも映像出力専用の端子がないからアダプタをかませるかHDMI端子のついているPCを持っている人に頼る必要があります。これのために僕が今までに何人のプレゼンの資料を中継したことか。あとSurfaceくん薄いのは良くても重いからね。最近は富士通からもっと軽くて端子も十分なのが出てるのでちょっと気になってます。買わないけど。

ちなみにデザイン系でもないのにMacを買う大学生なんなんですか?本邦におけるスマホのシェアは圧倒的にiPhoneですけどPCのOSではWindowsなわけで、どうせ使いこなせなくて人に訊くんだから訊ける人の多いWindowsを買うのが賢明だと思いますね。というかウインドウの外にメニューがあるのキモすぎる。

結局Bluetoothイヤホンは5000円の骨伝導イヤホンを買ってみたんですが、うーんといった感じです。骨伝導イヤホンの良さは耳をふさがない点で、必要な環境音を拾うことができるため特にジョギングなどで効果を発揮すると言われていますが、電車に乗っているときなんかはトンネルや橋梁やポイントの通過で一時的に騒音の音量が大きくなることがあり、音楽を流していたとしてもこれを遮ってしまいます。また公共交通機関は意外に他の人との距離が近く音漏れに不寛容です。購入したモデルは比較的音漏れが大きいものだったので、電車内で使うことは諦めることにしました。(元は電車内でノイキャンイヤホンをしているがゆえに放送を聴けず降り遅れる人がダサいという理由で耳をふさがない=周りの音も聴けるイヤホンを希望していたわけですが。)

あと耳をふさがないものを選んだ理由として耳をふさがないから何とも言えない耳の嫌な感じがないというのもあったんですが、こめかみを押されるのもそれなりに違和感があるので、それでも耳をふさがれるよりはマシですし、個人の考え方によって変わるとは思うんですけど、個人的には劇的な改善があったわけでもないなって思いました。

というかそもそも電車に乗ってるときに好きな音楽を聴く性じゃない……とかいったら元も子もないですけどそういうことかもしれないです。それでも役立つ場面は結構あるので使える範囲で使ってみようと思います。パソコンにも使えるようになったことですし。

使用雑感: ELECOM off toco DGB-S037

お疲れ様です、わかばだいです。

普通に毎日使ってる鞄がボロボロになってて、代わりに容量の小さい鞄で我慢してたんですが、そろそろしっかり買い替えたいなと思って買い替えました。

 

off toco

www.elecom.co.jp

エレコムが出してるカメラバッグです。カメラを入れることを念頭においてるので「カメラバッグ」ですが、ケース部分を取り除けば普通の鞄になるのが特徴になっています。

今回僕は普通に使うための鞄(カメラを持っていく必要のある時に入れるスペースがあったらいいな程度)を探していたのでなかなか丁度いいコンセプトです。

www.hakubaphoto.jp

普通に使う鞄にカメラを入れるならハクバさんのアレ買えばいいじゃん!って言われそうですが(ちなみに持ってます)、ふつうの鞄ってそんなにマチないんですよね。あれはあれで便利なんですが、それ以外のものが入らなくなって結構困ってました。あと出し入れもなかなか厳しい(ギチギチなせいで一旦鞄を置かないとカメラを取り出せない)。それを鑑みると、off tocoはちゃんとしたカメラバッグなので横から取り出せるし荷室が別れてるので素早く取り出せます。あとカメラケースも値段に入ってるので普通にお安いです(今回僕が購入したものはビッカメで実売1万円してませんしそこから10%還元。ハクバさんのはカメラケースだけで2~3000円したっけ)。

 

DGB-S037とS038

なんか意外にこれを説明しているページが見当たらないですが、簡単なことで、大きさが違います。今回買ったS037の方が一回り大きいです。S038はハイグレードじゃない方(S037もS038も「ハイグレード」ラインに属しているバッグです)のoff tocoと同じくらいの大きさだったかな。ちなみになぜかS037の方がお安いです。大きいのに。

 

使い心地

僕は日用を前提に購入しましたが、仮にも「カメラバッグ」なので気になるのはカメラバッグとしての性能。これが、期待していたよりかなり良いです。ケース部分の内寸は270×110×190となっていて、レンズをつけたままカメラを入れる際にカメラの高さ方向となる長さが110mmということになりますが、Nikon D600(141×113×82)も入りました。この内寸は非常にありがたいです。また、左右両方にカメラの取り出し口があるので、鞄を前に背負えばレンズ交換も立ったまま行えます。ちなみにケースの収納力としては、具体例を挙げればNikon D600 + AI 25~50/4S(仕切り)New 20/4, AI 135/3.5、みたいな感じです。半分くらいでカメラケースを区切った片方に小型なレンズなら2本は入ります。

カメラバッグとして使う際に嬉しい事として、上半分の荷室を広く使える事が挙げられます。このバッグ、2気室状態の上半分に500mlペットを立てて入れられるほどの高さがあり、実際かなり広いです。ここに財布を入れるなり、フィルターを入れるなり、下に入りきらないレンズを入れるなり、自由に使えます。

もう一つカメラバッグ状態で非常に嬉しいのが、PC用の荷室にA4ファイルを入れるポケットがある事です。これが画期的な機能で、簡単に言えばカメラバッグでありながらにして通学用の鞄としても使える、ということになります(ちなみにですが頑張れば上荷室にA4を横向きで入れられます。上荷室幅300>A4長辺297)。このバッグ以外でPC用の荷室以外にA4ファイルが入れられるカメラバッグに僕はまだ出会ったことがありません。それでいてお安いので、そういうバッグがあったとしてもこのバッグに行きついたと思います。それほど良いです。(まあ買ってから気づいたんですけど。)

もっともA4で厚みもあるような教科書を持っていくような日には、もうPCで充分肩に負荷が来ているわけですし、カメラケースを取り出してカメラ分の重さを開放してやることになります。ここで気になるところがあるとすれば深さの問題です。高さ190mmのカメラケースの上に500mlペットを立てて入れられるわけですから、合わせれば相当な深さがあることがお分かりいただけると思います。実際A4ファイルを入れてもさらに上に15cmくらいは余ります(内寸高さ450mm=A4長辺297mm+153mm)。こうなると、鞄の底に放り投げることになる財布やらは深すぎて上からはかなり取りにくく感じます。そうしたときにはカメラ用のサイドのポケットが役立ちます。たまに高さ方向に引っかかりますけど、ポケットに幅があるので水筒なんかも取り出しやすいですね。

すっかり触れるのを忘れていたバッグの内装ですが、購入した黒のバッグの中身は橙色になっていて、明るくて中が見やすいです。あと2気室状態の上の荷室の部分には前後両方にポケットが複数ついていて、荷物はまとめやすい方なんじゃないかなと思います。バッグインバッグを使っていたんですがこのバッグでは必要なさそう。

ただ上荷室の開口部は上側面の体の反対側の縁から長辺の半分くらいまで伸びてるので、特に前に背負った際に中のものが出しにくく感じることがあります。上側面のど真中を通ってくれてればもう少し違ったんでしょうけどね。特に体側のポケットに入れたものは見えないし出しにくいです。(折り込めばええやんというのはそう。)

買ってすぐなのでまだわからないですが、いまのところ耐久性は良さそうです。持ち手が2つ出ているおかげでここがちぎれる心配はなさそうなのが安心します。そもそもがカメラバッグなのもあってそこらへんはしっかりしてるんじゃないかな。強いて言えば肩紐の長さを調整したときの「あまり」を遊ばないように固定するゴムがわりとすぐにボロボロになります。

カメラバッグらしく撥水もすればカバーもついてます。あと謎の胸の小物入れもついてきますが使ってないです。よく考えたら前に背負って電車に乗ったら無防備になるし、その前に需要がないかな。

ちなみに普通の鞄の際に側面のドリンクホルダーの片方に折り畳み傘をぶち込んでた僕ですが、このバッグでは向かって右側の三脚ホルダー(?)のところに縛り付けてます。たぶん落ちない。

ちょっと残念なこととして、型崩れはそれなりにします。自立性も必ずしも良くなく、カメラケースのない状態では倒れることも多々。置き方や荷物の入れ方にも関係すると思うので何ともですが、気をつけないと倒れることはあります。

 

総括ですが、満足度はかなり高いです。取り出したカメラケースはファスナーを閉めておけば普通に置いておけますし、気室を分ける区切りがファスナーなので手早く且つ楽に転換できます。「兼用」の類って実際の運用上はどちらかとしてだけで使われることが多い気がしますが、これは本当にどちらでも使えて、一日おきに変更することもできます。たまにしかカメラ使わねぇし……って方でも、いや普通の鞄として使う気ないけど……って方でも満足いくんじゃないかな。それでいて中古のDX 35/1.8Gも買えない程度の安さ。魅力的ではないでしょうか。

 

ちなみにステマじゃないです。むしろ広告収入くれ。

使用雑感:New NIKKOR 35mm 1:2.8

いやぁ、毎月1本投稿をキープするのってなかなか大変ですね……まるひと月のブランク明けでの投稿です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。いつのまにかブログ初めてまる5年経ってたらしいです。

いつもはAIレンズを挙げるんですけど、今回は非AIの子。F2 Photomicにつけて使ってみたらなかなか強烈だったので書いてみます。

 

「MF」の「単焦点」であるということ

まあこれは35mmレンズに限った話ではないんですけど、MFの単焦点っていいですよね。まず単焦点であるということ。単一(複数本持ちの時は複数)の固定された画角で被写体を見て、どこをどう写したいか・切り取りたいかを考える。ズームレンズで「このくらいの焦点距離かな」って先にズーミングしてから……って使い方もできますけど(実際その使い方をしてる)、やっぱり単焦点は画角が一つしかないですから、集中力が違うというか、「この画角で撮ってやろう!」って気になるんですよね。また単焦点はズームよりも絞り値の選択肢が多い(ことが多い)のも魅力。

MFであるということ。これが意外に重要で、「どこにピントを置くのか」と「被写界深度をどれだけ深くとるのか」を必ず考えることになります。中望遠までいけば被写界深度の深さはあまり考えなくなります(被写界深度というよりボケ量という発想になる)が、35mmくらいまでならギリギリパンフォーカスができます。パンフォーカスで撮るのが割と好きな僕からすると、どの絞り値の時にどこからどこまでピントが合うのかという情報はかなり重要になってきますから、MF単焦点なら必ずついている被写界深度表示が欠かせないわけです。

 

35mmの画角について

35mmってすごく難しい画角だなって思います。

50mmより長ければ圧縮したりボケさせたりすればある程度サマになりますし、超広角なら画角いっぱいに被写体を置いたりパースペクティヴを強調したりして面白い画が得られます。でも35mmってどっちもできないんですよね。圧縮するには短すぎるしぐわんってやるには狭すぎる。本当に配置をうまく考えないとただの記録写真になってしまう難しさがあります。ズームの中の35mmならまだしも、単焦点だっていうのが厄介。『ニコンS型カメラの時代、カメラマンの三種の神器と言われたのが、3.5cm、5cm、8.5cmの3つの焦点距離のレンズでした。一人前のカメラマンになるためには、この3つの交換レンズを自在に使いこなさなければなりませんでした。』(ニッコール千夜一夜物語 第三十七夜)とあるだけあるなぁと思います(なので僕は半人前です)。

 

New NIKKOR 35mm 1:2.8

ところで35単をはじめとする広角レンズにクモリの持病のあるレンズが多いのどうにかならないんですかね…… 

 www.nikon-image.com

閑話休題。改良された方のレンズが今回の子です。前玉にクモリのある暗いNew代非AIの35単という救いようのない属性ですがこういうわけで手に入れることにしたわけです(この光学系をお探しならAI代前期型のほうをお薦めします)。外装はAIにも似ていますが、なんとなくボテっとして垢抜けない、いかにもNew代といった感じです。あと絞り環のローレットが鋭くて少し痛いです。

 

写り

明るさを無理していないこともあって、撮影時にファインダーを覗いた程度ではいやな像の流れや点ボケの安っぽさを感じることはありませんでした。

写りを確認する前に。現像時に一緒にしてもらうデータ化ってなんか微妙ですよね。低画質でフィルムのもつ解像感を発揮しきれていない感じがします。インデックスに毛が生えたようなものというか…… 焼くときは十分な画素数出すんだからそのデータを欲しいものです。

さて、情報量の少ないデータをもとに感じたことを書いていきます。ちなみに比較用に-S Auto 35/2.8(後期)も少し使いました。

作例1
Nikon F2 photomic / FUJICOLOR C200
New NIKKOR 35mm 1:2.8 f/11 1/15

パンで使う限りでは、全域にわたって高画質な予感をさせます。35mmなのでパンフォーカスはまあまあやりやすいです。

作例2
Nikon F2 photomic / FUJICOLOR C200
New NIKKOR 35mm 1:2.8 f/2.8 1/250

開放近傍でも解像力はそれなりにあるようです。こればっかりはこのデータでは分からないですね。後ボケの2線ボケは若干ありますがそこまで強くはないです。

作例3
Nikon F2 photomic / FUJICOLOR C200
New NIKKOR 35mm 1:2.8 f/2.8 1/30

作例4
Nikon F2 photomic / FUJICOLOR C200
NIKKOR-S Auto 1:2.8 f=35mm f/2.8 1/125

前モデルである-S Auto 35/2.8後期型との違いを最も感じたのが周辺の光量です。Autoでは解放で周辺の光量落ちがはっきりとわかりますが、Newではまったく感じられなくなっています。まあ絞ればいいんですが、解放でもパンフォーカスが狙える画角なので助かります。標準や中望遠なら逆にアリなんですけどね……

ちなみにNewの解放で空を撮るのをすっかり忘れてました。収差確認のための写真ってある意味作品作りのための写真とは別ジャンルですよね。

 

暗いから安定した写りなのは当然だと言われればそれまでですが、暗くても安定していなかった(?)時代が事実としてすぐそばに存在しているので、そのありがたさを感じます。星像などは映してないので分かりませんが、少なくとも日用で何か物足りなさや嫌な収差を感じることは無さそうです。

特に-S Auto後期と比べると性能が向上して扱いやすくなったと感じます。中古市場としてはクモリと非AIに泣かされますが、実行環境のある中で良い個体を見つけたら実用としてレパートリーに加える価値のあるレンズだと思います。35mmで鍛えると画角の取り方のレパートリーが増えるのでおすすめです。

使用雑感:ふわっとソフト&ソフトフォーカスフィルター

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前回取り上げたソフトフォーカスレンズ/フィルターを実写で試してみたので、感じたことをざっくり書いてみます。

千夜一夜のソフトフィルター回の作例がブツ撮りだったので真似して自室でブツ撮りです。カメラ撮っても面白くないのでユーフォニアムを。ちなみに光源はSB-600でTTL測光・天井バウンスです。

 

ふわっとソフト

復習ですが、ふわっとソフトは球面収差を残存させたソフトフォーカスレンズです。つまり俗に言う「絞るとピントがズレる」レンズを、絞ったときのピント面にピントを合わせて撮らなければなりません。しかもふわっとソフトには絞りはありません。こうなると厄介で、AFボディのフォーカスエイドが使い物にならず、フォーカシングスクリーンのマット面でピント合わせを行わないといけないのです。まあちゃんとしたレンズではないので写りを楽しめれば良いのですが、モデルの撮影などには向かないことを注記しておきます。デジタルボディでピントブラケット撮影を行うくらいでちょうど良いです。

失敗例(ピンぼけ)

実際ピント合わせは難しいですね。

作例1
Nikon D600 + ニコンおもしろレンズ工房 ふわっとソフト 90/4.8
f/4.8 1/60 ISO200

ソフト量はかなり多いです。右上に関しては奥にある管のフレアが手前にあるピストンを覆うように出ています。

 

ソフトフォーカスフィルター Soft1/Soft2

ふわっとソフトの焦点距離は90mm、F値はF4.8なので、手持ちで近いスペックのAI Micro 105/4Sをマスターレンズに選びました。ふわっとは解放固定なのでこちらも解放で。ふわっとと異なり球面収差によらないソフト効果なのでピント合わせはとてもしやすいです。フォーカスエイドも効きます。なおソフト量は1<2です。

作例2
Nikon D600 + AI Micro 105/4S + Soft1
f/4 1/60 ISO200

作例3
Nikon D600 + AI Micro 105/4S + Soft2
f/4 1/60 ISO200

ソフト量はふわっとと比較すると小さいですが、楽器表面の質感はちゃんとベールをかけたように柔らかい写りになっています。解像感も落ちすぎていない感じがします。このくらいの高い拡大率ならふわっとの方がソフト感が強くていいですが、人物とかやや引き目で使うならばこちらのほうがちょうど良いと思います。

 

おまけ1 ぐぐっとマクロ

ふわっとを出すということはぐぐっとを出すということなので撮ってみました。

ちなみにですがぐぐっと/ふわっと(及びどどっと)はφ=52なので、ぐぐっとにソフトフォーカスフィルターを使うこともできます。使い所はないですが。

作例4
Nikon D600 + ニコンおもしろレンズ工房 ぐぐっとマクロ 120/4.5
絞り開放固定 1/60 ISO200

 

おまけ2 AI Micro 105/4S

フィルターのマスターレンズで。精度が厳しかろう(cf.第五十二夜)トリプレット系ヘリヤー型を分解した(カビを取りました)ので本来の写りではないかもしれない点ご了承ください。

作例5
Nikon D600 + AI Micro 105/4S
f/4 1/60 ISO200

画面下から上へスクロールするとソフトのかかり具合が分かりやすいと思います。ぜひ参考にしてください。

ニッコール千夜一夜物語を振り返る 第四週 ソフトフォーカスとニッコール

ソフトフォーカス撮影ってやったことありますか?

やったことある人は少数派だと思いますし、なんなら「ソフトフォーカスとはなんぞや」という方もいらっしゃると思うので、軽く説明します。

 

ソフトフォーカス(軟焦点)とは

一般の撮影レンズでは、高解像で再現性の高いものが(当然ながら)良しとされます。しかしながら、高解像すぎることは時に望ましくないのです。たとえばニッコールの切れ味は「モデルの毛穴まで写す」と言われていましたが、これが場合によって被写体の欠点を露わにしてしまうことになります。そういうわけで、光学的に球面収差を大きくしたレンズだったり通常のレンズの前につけるアタッチメント(多くはフィルター)だったりを使用し、あえてコントラストを落としたりフレアを出したりすることが行われてきました。

 

二種類のソフトフォーカスとニッコール

上でも触れましたが、ソフトフォーカスの写真を得るには2つのパターンがあります。第一に専用の光学系を用意すること。第二に通常の光学系にアタッチメントを装着すること。専用レンズは各社数本程度発売した実績がありますが、ソフトフォーカスフィルターと呼ばれるフィルターを通常の撮影レンズの前に装着して効果を得るのが一般的です。

ソフトフォーカスフィルター

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ニコンもソフトフォーカスフィルターを用意しています。現状純正で用意があるものに関してはこれのみになります。

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そして、そのフィルターの前身がこのソフトフォーカスフィルターSoft1, Soft2になります。

一般的な撮影レンズならまだしもフィルターが世代交代?と思うかもしれません。というのも、フィルターはただのねじ込みアタッチメントなのでマウントの仕様変更だとか外装変更だとかがほとんどないんですよね(まあ日本光学は昔からFレンズは原則フィルター径52mmと72mmに統一しようとしてましたし、その前は"NIKKOR FILTER"でしたから皆無ではないです)。実際ソフトフォーカスフィルターの変更は性能やサイズの問題によるものではなく、RoHS指令によるものです。簡単にまとめると、レンズに使用するガラスが限定されてしまい、使えなくなった従来のガラスではできた特殊な製造法が新ガラスでは使用できず、泣く泣く製造法を改めるに至った、というわけです。今日では新品で作りたくても作れない、そんなフィルターです。

一般的なソフトフォーカスフィルターでは、フィルターに微細な傷などをつけることでフレアを発生させます(ニューソフトもこの類です)。しかしこのフィルターはそうではなく、ガラスを化学的に処理して独特な屈折率をもつガラスを作成することでフレアを発生させます。フィルターに凹凸があるとそれがボケに写り込んで綺麗なボケになりませんが、この手法ならばその心配がありません。球面収差を利用したソフトフォーカスレンズは後ボケが綺麗になるのですが、そのようなソフトフォーカスニッコールを作ろうとして頓挫しただけに、ボケへのこだわりは強かったのです。

専用レンズ

NIKKORが誕生してから今まで"Soft"を冠した*1ニッコールレンズ*2は発表*3されていません。

まず*3から。上の回の最後で紹介されていますが、試作品としてSoftfocus NIKKOR-S Auto 105/2.8(斜体部は表記不明)が存在します。非球面レンズを用いた大胆な光学系ですが、試作より先に進まず幻のレンズとなりました。

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続いて*1です。このレンズは"Soft"の名を冠してはいないしソフトフォーカス専用レンズでもないものの、ソフトフォーカス撮影が可能となっています。このレンズ(とAI AF DC 105/2S)はボケ味を自分の好きなように操作できるのです。その機能を活用すると、光学的にソフトフォーカスにすることができます。

このレンズでは、DC(Defocus Control)リングを回すことで光学系の一部を動かし、球面収差の量を調整することができます。球面収差は光線がレンズのどこを通過するかによって結像位置がズレる収差で、このズレがないほどフレアがなく高コントラストな画を得られます。よく「絞ることでピントがずれる」とかいうのは球面収差が大きいことに起因するものです(絞りによってカットされる周縁部を通ってくる光線とカットされない中央部を通ってくる光線で結像位置が違うということ)。こういうレンズでは絞り開放では周縁部を通ってくる光線に合わせてピントを合わせるんだろうと思いますが(だから絞るとピントがずれる)、ここでレンズ中央部を通ってくる光線を基準にピントを合わせると、レンズ周縁部を通ってくる光線はその位置では結像していないためフレアとしてぼやけて写ります。これこそが光学的なソフトフォーカスです。

(前略)DCリング自体はF5.6よりもさらに回転するが、それは元々F11までの目盛りを刻む予定であったからである。結局、絞り込むとボケが小さくなり効果が乏しいため目盛りは廃止になったが、めいっぱいリングを回した時のソフトフォーカス効果も面白いよねという遊び心から、ストロークを削らずにそのまま残している。所有されている方は、DCリングを過剰に回したときのソフト効果もぜひお試しいただきたい。
ニッコール千夜一夜物語 第三十二夜より

球面収差はピント面の写りだけではなく前後のボケの形状にも影響します(そのためのDC)。今回はソフトフォーカス回なので割愛しますが、球面収差のあらましによって後ボケ(または前ボケ)を柔らかい形にしたり二線ボケにしたりすることができます。

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最後に*2について。雑に言えば、「ニッコールを名乗っていなければ」ニコン純正にソフトフォーカス専用(?)レンズが存在しました。その名も「ふわっとソフト」。

なんと1群2枚、ただのダブレットです。球面収差が大きく残存していて、これがソフトフォーカス効果を生んでいます。ひっくり返して像面側に一群一枚のレンズを挿入すればマクロレンズになる変わり種、まさに「おもしろレンズ」です。

 

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次回実際に手持ちのソフトフォーカスを試用してみます。お楽しみに。