リトルニコ爺の手記

わかばだいとかいうハンネでTwitterをやってる人が昔やってたYahoo!ブログから引き継いでリスタートした沼みの深いブログ。

メディカルニッコールを衝動買いした話

松屋銀座お疲れ様でした。

www.cameranonaniwa.co.jp

催事の裏で、渋谷に新たなカメラ屋が誕生しました。レモン社渋谷店です。新宿とか銀座教会とかのレモン社さんです。スタジオ728と合わせて渋谷モディの地下に爆誕しました。

 

初日に行った(まあ7日までの一週間に4回行ってるんですが)際にちょっとインパクトの強い子を拾ってきたので紹介します。

 

Medical-NIKKOR 120mm 1:4 (IF)

Medical-NIKKOR 120mm (M=1/11) 1:4
発売年月 1981年12月
型式 ニコンFマウント医療用単焦点レンズ
焦点距離 120mm(1/11倍)
最大口径比 4
レンズ構成 6群9枚
撮影距離 1.6m(1/11倍)~0.35m(1倍)
絞り 4(1/11倍)~32(1倍)
アタッチメントサイズ 49mm

www.nikon-image.com

ただの撮影レンズではありません。口腔撮影のための特殊レンズです。特徴的な組み付けスピードライトの中に特徴的な内焦式の光学系が秘められています。GN固定のストロボを使用する前提なので絞りとピントリングが一体となっていて、ピントを合わせると勝手に絞られます。する必要がないので露出系連動はないです。ある意味GN-NIKKORの上位互換ですね。

補償しない変倍はピント合わせに応用できます。もちろん変倍しているので焦点距離は変化しているのですが、無限遠光線の結像面を物体側に動かすという点で光学系全体の移動(通常の「ピント合わせ」)と無補償の変倍は似ています。結像面を変倍中固定にするために存在している補償群を無くして仕舞えば補償されず像面が動いて結果近距離にピントが合う、というわけです(参考文献)。そういうわけで、四群アフォーカルズームから補償群である第三群を取り除いたような凸凹凸三群構成構成のIF中望遠単焦点レンズが生まれたのです。

ちなみに、69夜本文中に『私は直接このレンズ開発秘話を飯塚さんにお聞きしました。すると、この仕事を受ける寸前まで望遠ズームを設計していたらしいのです。』とありますが、設計年代を考慮するにここでいう「望遠ズーム」はE75~150/3.5(関連特許出願1980.2、1980.5発売)か、あるいはAI ED 50~300/4.5(関連特許出願1976.5、1977.5発売)あたりだと考えられます。メディカルニッコールに近い光学系に関する特許の出願が1980.8であることからE75~150/3.5説が有力になっていますが、いずれにせよ四群アフォーカルズームを多く手掛けていた飯塚氏が設計に携わったからこそ、このような斬新なレンズタイプが生まれたのです。

メディカルニッコールでは無限遠は出ませんが、このアイデアはマイクロニッコールにも生かされています。AF-S Micro 60/2.8GAF-S DX Micro 85/3.5GAF-S Micro 105/2.8GといったAF-Sマイクロの光学断面図を眺めてみると、前凸群が弱く補償群のない四群アフォーカルズームの形状が浮かび上がってきます(前凸群が弱いのは合焦の役割がなく接写時の周辺光量の確保に有利だからだと考えられる)。まさに「メディカル型」であることがわかります。

ちなみに、AF-Sの一つ上の世代であるAI AF代の60マイクロ105マイクロはいずれもダブルガウステレコンをつけたような形状をしていました。なぜ大幅に光学系が変わったのか。これはひとえに鏡筒設計の面で有利だからではないかと考えています。AI AFでは光学系全体を(部分ごとに異なる動きをさせながら)物体側に動かしてフォーカスします。これでも等倍まで合焦させられるのですが、多段階に鏡筒を繰り出すなど複雑な鏡筒設計が求められます。ところが「メディカル型」では、動かすのはレンズ中程の数枚のレンズのみ。軽量かつ単純で、鏡筒の内側で処理することができます。鏡筒設計やAF速度、耐久性など様々な面で有利であることは明らかです。

 

閑話休題、このメディカルニッコールはピントを合わせると勝手に絞られてしまいます。GNが固定であるため当然の事ではあるのですが、今日我々が使うには少々不便です。というのも、電源ユニットやケーブルがなかなか無いのです。自然光下で使うとなると、ピントと絞りが一体だとずいぶん苦しい。ここで活躍しそうなのが他社向け「Gタイプ対応」マウントアダプターです。千夜一夜ではIXニッコールを使うために佐藤氏がしれっと使っています(!?)が、Gタイプレンズを他マウントで使うための絞り可変マウントアダプターと、そのマウントからさらにZマウントへのアダプターを重ねることで、擬似的に絞り可変FTZと為すことができます。

まあレンズ側で絞られた状態になってないとこれを使ったても絞ることができないので、例えば最長距離(絞り開放)でF11とかはできません。逆に至近で開放とかはできるので遊ぶ分には問題ないと思います。むろん自己責任でお願いします。

まあ僕はそもそもZを持ってないので大人しくD600で撮ることになります。いつの日にか……!