リトルニコ爺の手記

わかばだいとかいうハンネでTwitterをやってる人が昔やってたYahoo!ブログから引き継いでリスタートした沼みの深いブログ。

ズームマイクロニッコールの光学変倍・合焦方式について考える

ご無沙汰しています。わかばだいです。

ズームマイクロニッコール(AI Zoom-Micro NIKKOR ED 70-180mm 1:4.5-5.6S)の摩訶不思議なズームタイプについて、ある程度納得のいく解釈を見出せたのでまとめてみたいと思います。

www.nikon-image.com

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ズームマイクロは、その名の通りズームするマイクロレンズです。レンズ単体での等倍撮影こそできませんが、一般的なズームレンズの比ではない最短撮影距離0.37m、最大撮影倍率1/1.32(約0.758)倍を達成しています。今でもなお暴力的な値です。それでもAI AF 80-200/2.8D<New>より体感で小型なレンズに仕上がっています。比較的暗いように感じられるスペックですが(そもそもマイクロレンズはそうでないレンズより1~2段暗いのが常です)、短距離時の露出係数を考慮する必要がないので、単焦点のマイクロと比べても実用上遜色ない明るさになっていたりします。

 

ズームレンズはとりあえず2種類に分けられます。凹群先行・凸群先行の二つ。凹群先行は広角域を含むズームレンズで用いられることが多いですよね。

Zoom-Microは凹凸凹凸の4群構成になっていますが、AI AF 35-70/2.8Sとは少し違います。Web版の図に直接書き込まれているように、Zoom-Microは前の2群で合焦し、後の2群でズームします。これによってズーミングで第一レンズの位置が変わらない光学設計を達成しているわけですが、これは4群全体でズームする35-70/2.8のズーム方式では達成できません。

ズーミングで光学系の全長が変わらないズーム方式といえば凸群先行の凸凹凸凸4群アフォーカルズームが思い浮かびます。実際AI AF-S 80-200/2.8Dほか多くの80-200mm級大口径望遠ズームレンズがこの方式を採用しています。ではなぜZoom-Microはこれでないのか?それは"Micro"だからだと思われます。35-70/2.8の記事で言及されていますが、凸群先行ズームは望遠側での光学設計がしやすい利点があり、先頭凸群が光を収斂するので後群の構成を小型にできます。またテレフォトタイプ(凸-凹)のことを考えれば、先頭に凸群を配置することが一般的に合理的であると考えられます。

しかしながらこれは"Micro"。当然ながら最短撮影距離は短くないとなりませんし、接写時でも充分な光学性能を発揮できる必要があります。第1群フォーカスはいくつかの問題を抱えています。AI 35~200/3.5~4.5Sの回で指摘されているように、周辺光量を稼げないことや前玉が大型化してしまうことが挙げられます。そしてなにより致命的なのが、最短撮影距離を稼げない点です。寄れないレンズにマイクロの冠はつけられません。こういった理由で、Zoom-Microはネガティヴリード(凹群先行)ズームになったと考えられます。

ここでE75~150/3.5を振り返ってみましょう。凸凹凸凸4群アフォーカルズームのお手本のようなレンズです。先頭が合焦群、第2群が変倍群、第3群が補償群、第4群がマスターレンズです。簡単に言えば前の3つの群が可変倍率のフロントコンバージョンレンズで、第3群を出る光線は光軸に対して平行(アフォーカル)です。これをZoom-Microにあてはめて考えます。前2群がフロントコンバージョンレンズ、後2群がマスターレンズ、ということです。こうなると2つの凹凸2群ズームが見えて来ると思います。

後2群は普通の凹凸2群ズームです。75~150/3.5よろしく結構簡単な構成になっています。まあAF 28-80/3.3-5.6Gよりは構成枚数多いですけどね。どちらかといえばAF-S DX 12-24/4Gになんとなく似ています(後群の凹レンズが貼り合わせになっているところとか特に)。明るさやズーム倍率(2.57x)を無理していないので比較的コンパクトです。前群と後群の径が概ね同じところに、AF-S DX Micro 40/2.8Gのような「レトロフォーカス度」の弱いレトロフォーカスレンズの特徴を見出すことができます。

前2群が合焦群(『マイクロ部』)です。凹凸2群ズームの構成になっています。合焦の仕組みはズーミングと同じです。Medical 120/5.6の回にあるように、「変倍する」ということはズーミングもフォーカシングも同じことです。そもそもズームレンズの補償群は変倍群による変倍によって生じた像面の位置変化を補正し像面位置を固定するために存在しています。これを省き、変倍によって像面の位置を動かすのがIFの単焦点なわけです(合焦とはすなわち像面位置の変化です)。Zoom-Microの前群では、凹凸2つのレンズ群の位置関係を変化させることによって変倍し、補償せずにマスターレンズ群に送り込んでいます。これによって像面の位置を変え、ピントを合わせることができるわけです。

 

というわけで、前2群が無補償の凹凸2群ズーム、後2群がズームのみの(ピント合わせはしない)凹凸2群ズーム、と説明できます。自分では納得いっているのですが、いかがでしょうか。

……それはそうとズームマイクロほしい。

 

P.S.

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