リトルニコ爺の手記

わかばだいとかいうハンネでTwitterをやってる人が昔やってたYahoo!ブログから引き継いでリスタートした沼みの深いブログ。

ズームレンズあれこれ第三回「ワイ端で長いレンズ、テレ端で長いレンズ(後編)」

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Ai 43~86/3.5 / E36~72/3.5
全長が最長の状態

43~86が3群ズームであるのに対して、36~72は2群ズームの仲間に入ります。簡単に説明すると、レトロフォーカス(凹凸で構成されるレフ用広角レンズ用のレンズタイプ)の2つの群の間の空気間隔を変えて焦点距離を変えるズーム方式です(凹群先行ズームと呼ばれます)。

このレンズタイプでは、概ね光学系が2つに分かれて前後します。前側凹群の動きはレンズによってさまざまで、ワイ端で最も物体側に出るものもありますが、最も多いのはUターン軌道を描くものです。ワイ端とテレ端で物体側に出て、中央域でフィルム側に寄ります。後側凸群はそろって焦点距離を伸ばすにあたって大きく物体側に進みます。後群を分割してこの動きを小さくしているレンズもあるようです(大口径化などに役立ちます)。

元来レトロフォーカスタイプのレンズは負(樽型)の歪曲が出ることが問題とされていました。-H Auto 28/3.5などの単焦点レンズではこれを完璧なまでに補正することが出来ましたが、さすがにズームにはその余裕は無かったようで、AF 28-80/3.3-5.6Gなどを見ても結構ワイ端で歪みます。カメラがデジタル(CCD機は除く)で、レンズがCPUと撮影距離エンコーダが装着された以降(~Sタイプ以外)ならば自動で補正がかかるので全く気になりませんが、フィルムの時代には弱点だったようです。Ai 25~50/4Sなど見事に補正されているレンズもあります。

 

このタイプのレンズの初出は、実際には発売されなかったオートニッコールワイドズーム3.5~8.5センチF2.8~4です。43~86の後に発表されたこのレンズは、レンズ構成を変えることで広角側を拡張できましたが、その代償としてとても大きく重くなってしまいました。また両方の群が変倍と補償を同時にになっているための難しさもあったのでしょう。これらは電子計算機の登場によって徐々に解決され、非球面レンズの量産が可能になると一気に廉価高性能化を達成します。

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AF 28-80/3.3-5.6G

現在では、これら2群ズームはよく28-80mm級(DXフォーマットで18-55mm、4/3またはm4/3で14-42mm、CXフォーマットで10-30mm)の廉価版標準ズームとして使われているのをよく目にします。群が少ないのでレンズ枚数も減らすことができ小さく安く作れるのでしょう。またこの系列で群を増やしたレンズ(凹凸凹凸など)は、New 28~45/4.5や14-24/2.8系、Ai AF 35-70/2.8Sから24-70/2.8系など大口径広角~標準ズームレンズに見ることができます。(Zマウントの24-70はF2.8もF4も凸軍先行型に変わりました。)