リトルニコ爺の手記

わかばだいとかいうハンネでTwitterをやってる人が昔やってたYahoo!ブログから引き継いでリスタートした沼みの深いブログ。

640Fを買ったので盛大に自慢します

自慢回です。あんまり中身はないですがお許しください。

 

640Fを買いました。

ちなみにC101に連れてってます(前回の記事の写真にも写り込んでます)。

 

640Fとは

シリアルナンバー(以下S/N)が640****のニコンFのことです。ニコンFのS/Nは640****から始まるので、要は最初期のものということ。一般に初期モデルや若番のものは珍重されるもので、欲しい人が多い反面個体数は少なく、プレミアがつきます。乱暴な言い方をすると、番号に希少価値がついてるといった感じ。

ニコンF自体は1959年の発売から1979年まで販売されており、その間にいろいろと変更がなされています。つまり、初期型には初期型にしかない特徴があるのです(だからこそ珍重されます)。これはあとでゆっくりじっくり見ていきます。

 

Nikon F 概観

ニコンFそのものについて少しまとめておきます。

Nikon F

型式

135フィルム用一眼レフレックス

機械制御式フォーカルプレンマニュアルフォーカスカメ

レンズマウント ニコンFマウント(接点なし・ミラーアップ機構あり)
交換レンズ 絞り環のあるレンズ(及び絞り非搭載レンズ)(ミラーアップが必要なレンズも装着可)
ファインダー 交換式(アイレベル・ウエストレベル・アクション・フォトミック・フォトミックT・フォトミックTN・フォトミックFTN)
フォーカシングスクリーン 交換式
ミラー クイックリターン式、ミラーアップ可(空写しが必要)
プレビュー プレビューボタンにより絞り込み可能
レンズ絞り 瞬間復元式
シャッター 機械式チタン幕*横走りフォーカルプレンシャッター
シャッタースピード T, B, 1~1000 X=60 全速マニュアル動作
セルフタイマー 機械式 ~10"

*)ごく初期のモデルは布幕らしい

完成された一眼レフカメラとして世に送り込まれた伝説の一眼レフカメラ。「完成された」というのは、完全自動絞り・クイックリターンミラー・正立正像を得るアイレベルファインダーの3つが同時に達成されたカメラであることを意味します。これがそろったのはFが最初らしいです(要出典)。ちなみにF登場の時点でレンズの絞り値とSSとに連動した露出計(「ニコンメーター」、外光式)が用意されており、のちにTTL測光ができるフォトミックファインダーが追加されます。

Fが「伝説」と呼ばれるのは、これらの機能が備わった上で、きわめて造りが堅牢であったからです。また多彩なレンズ群やアクセサリの供給があって、はじめてプロがこぞって使うカメラになったのだと言えます。実際、ニコンFのためにたくさんのレンズが新規に設計されました。フランジバックの問題がありますから、既存のレンジファインダーニッコールはFマウントにはほとんど流用できず(そのまま流用したのは10.5cmF4と13.5cmF3.5くらい?)、一からの設計になったのはニッコール千夜一夜物語で度々語られている通りです。それだけの思い切った投資をするだけの価値が一眼レフにはあったのです。長くなりそうなのでこの辺にしておきますが、光学設計に革命を起こしたのはニコンFを念頭に置く一眼レフカメラであることを確認しておきます(Zも同じ)。

 

Fの世代

Fには世代がまあまああります。長期間発売されてましたからね。ざっくり「前期」「中期」「ニューF」の3つに分けられます。「前期」はボディ軍艦部に日本光学の「おにぎり」マークがあるもの。「中期」はここが"Nikon"表記のもの。後期は「ニューF」と呼ばれ、まあ"Nikon"表記ではあるのですが、Nikon F2に倣ってセルフタイマーと巻き上げレバーに黒いプラスチックの指あてが付いた、見た目の印象の変わったモデルになります。市場的には中期が最も多く最も安いです。ニューFや前期はちょっと上に見られます。

そして前期のうちでもS/Nが若くなれば若くなるほど値段が上がっていきます。最も若いのが640****です。時期や店にも寄りますが、69*****と640****を比較するとどんなに安くても2倍は差がある感じがします。かなり強気な値付けをしているところだと640Fに10万円超の値をつけていたりします。年代によって10倍も開くんです。ひえぇ。

 

640Fの特徴

ちなみに厳密に640万代にしかない特徴かというと微妙だったりします。製造が続けられていた以上、徐々に改良を加えていったはずなので、いろいろな組み合わせがあると考えられます。というか640万代の中でさえ差異があります。(R05.2追記)

じっくり眺めていきましょう。ちなみににこら氏のNikon F(中期)と見比べて発見した違いをまとめています。ぜひお手元のFと比べてみてください。

正面

Nikon F (640万代) 正面

まずは正面。「普通の」Fとはこの時点ですでに何かが違っているのです。

正解は、セルフタイマー。模様がナナメに切ってあります。後の世代の個体はこれが鉛直向きになり、ニューFではプラ製の指あてが付いた別のデザインになります。

銘板も正解です。後の代ではフォトミックファインダーを装着しやすいように銘板の短辺が底辺が短くなるように弧を描いているのですが、640Fではほぼ等脚台形になっています。

あと外観の仕上げも、中期以降のものよりもギラギラした感じになっています。並べてみればわかる地味な違いですね。

 

軍艦部

軍艦部左手側

全体的にそんなにきれいな個体じゃないことはお許しください。

違いは結構たくさんあります。巻き戻しクランクの先端の丸い部分は回転せず柄と一体になっています。またその下の接点は丸の形をしています(6408***の個体にここが角ばっているものがある模様(R05.2追記))。ファインダー・フォーカシングスクリーン取り外しのボタンにも切り欠きがありません(こればっかりは正直使いづらい)。ファインダーは角窓です。

軍艦部右手側

銘は当然ながら「おにぎり」マークです。ここも違いが多く、SS銘板のネジが1本、文字がやや小さい、巻き上げノブの意匠が異なる、とこれだけあります。

 

フィルム室

フィルム室右側

Fなので裏蓋は蝶番式ではなく取り外し式です。ちょっと面倒ではあります。

フィルム装填の際に差し込むスプールの切れ込みが1つしかありません。後の世代だと増えており装填しやすくなっています。この個体の幕は金属(チタン)製でした。布幕、伝説級ですよね……

ちなみに巻き上げノブは裏が肉抜きされています。少し後の代からは肉が詰まってますよね。前述の通りニューFはF2に倣って指あてが付きます。

 

裏蓋

裏蓋内部

スプールに向かい合う位置にパテントが刻まれています。

開閉クランク(裏蓋左手側)

開閉クランクにJAPANの刻印があるのがわかりますでしょうか。

ちなみにこの形状から察しが付くように、Fはフィルムマガジンが使えます。

フィルムインジケータ(裏蓋右手側)

装填したフィルムのASAを覚えておくための表示です。フォトミックファインダーの測光とは全く関係がない飾りですね。デザイン(?)が他のFとは大きく違います。

ちなみにこの表示は裏蓋を取り外して上下からつまんでやらないと回りません。今はフィルム入れないのでE(Empty)にしてあります(合ってるよね?)。

 

ファインダー

ファインダー正面内側

Fのアイレベルファインダーは大きく丸窓(視度補正レンズなどをねじ込める)と角窓があるのですが、各窓の中にも少なくとも2世代あります。後期は"Nikon F"銘で、前期が写真の通り"NIPPON KOGAKU JAPAN"銘になります(ニッコールオート側での銘の変化の順からしてこれで間違いないでしょう)。ファインダーはバラバラにされて流通しがちなので、ここまでそろっているのはかなりポイントが高いです。

 

雑談

640Fにつけたいレンズといえばアレでしょう、NIKKOR-S Auto 5cmF2。メルカリを流してると640Fの多くがこのレンズとセットで販売されています。このレンズこそFマウント最初の標準単焦点です。7枚玉であることが特徴です(のちの世代では6枚玉になっている。cf.ニッコール千夜一夜物語第二夜)。このレンズも、9枚羽根・R表記・チックマークだと値段が吹っ飛びます。僕も持ってはいますがしがない6枚羽根です(ちなみにこのレンズも銘板の文字が-H Auto 50/2比で小さいですよね)。

NIKKOR-S Auto 5.8cmF1.4もいいですね。こっちもかなりレア。AF-S 58/1.4G("AFノクト")とは違って、F1.4の明るさの標準単の焦点距離を50(51.6)mmまで縮められなかったが故の産物です。まあこの焦点距離AI Noct 58/1.2を介してAF-S 58/1.4G(そしてZ 58/0.95 S Noct)につながってることは事実なのですけれども。

 

使い勝手ではやはりF2には劣りますが、それでもさすがはニコンF、露出さえ取れればクセなくきちんと動いてくれます。「一般的な」カメラとの操作の違いってスプロケット解除と裏蓋操作くらいですからね。旧式にありがちな独特の操作系が少ない、扱いやすいカメラに仕上がっています。

まあ文句を言うならば、いつも使っているF2と比べて

  • シャッターロックがない
  • 1秒超の長秒シャッターの設定がない(F2はT設定でセルフタイマーを設定した上でシャッターを切ると10秒までの長秒が切れます)
  • ミラーアップに空写しが必要
  • 多重露光が極めてやりにくい(F2はスプロケット解除ボタン押下でできるがFでは裏技が必要)

といった技術的な弱点があります。ここら辺を鑑みてF2が最強の機械式ニコンだと思っているのですがいかがでしょう。特にミラーアップに関しては-O 2.1cmをつけるかもしれないじゃないですか(持ってない)。OP-Fisheyeが転がり込んでくるかもしれないんだし(そんなことはまずない)。

まあ構造はミラーボックス以外はSPそのものですからね(にこらさん曰く「SPを触ってる気分」)。最初は新しいガワに現行の中身を入れておいて、落ち着いてきたらガワの改良に合わせて中身も一新する。Fマウントニッコールレンズ史を概観すればお分かりいただけるように、これがニコンのやり方です。そう言う意味では――Fを信仰している読者の諸君には大変申し訳ないですが――暫定機のFに対して、本当の初代FマウントフラッグシップはF2だったのかもしれません(事実それ以降のFやZではフラッグシップボディが後から出たわけで)。

 

というわけで、640Fを買ったぜ!ってお話でした。ここまでお付き合いくださりありがとうございました。