リトルニコ爺の手記

わかばだいとかいうハンネでTwitterをやってる人が昔やってたYahoo!ブログから引き継いでリスタートした沼みの深いブログ。

ズームレンズあれこれ第一回「通しF?」

これは出まかせなんですが夢の中にJust Do Itおじさんが出てきて"Just do it!!!"というので、だいぶ怪しい箇所の多い記事ではありますが公開します。

 

スチル用ズームレンズ(わざわざ断ったのはシネレンズの知識が皆無だから)は一眼レフの登場と共に芽を出し、発展していきました。世界初の標準ズームレンズは1959年の発売です。比較的歴史が短いんですよね。なのでありがたいことにうちにはだいたいの世代のズームレンズがおります。そこで少し語ってみようかと思います。

 


 

まず、ズームレンズにはズームで(光学系の)全長が変わるレンズと変わらないレンズがありますね。厳密にいえばズーム中絞りそのものか絞りよりフィルム側のレンズ群が移動する場合にはF値が変わるのだと思います(そのため繰り出し式フォーカスのレンズでは露出係数と言って撮影距離が短くなる=レンズを繰り出すほどF値が暗くなります CPUつき単焦点マイクロニッコールで撮影距離が短いときに解放F値の表示が暗くなるのはこのためです)が、ただもっと簡単な見分け方として、(特に中高倍率通しF望遠ズームに例外があるようですが)基本的に、ズームで光学系の全長が変わらないレンズは通しF、変わるレンズは非通しFです。

ここで「あれ?」と思う人も多いと思います。

たとえば、国内初の標準レンズはZoom-NIKKOR Auto 1:3.5 f=43~86mm(いわゆるヨンサンハチロクとかヨンサンパーロクとか)ですね。あのレンズは、千夜一夜の第四夜で説明されている通り、凸凹凸三群ズームレンズで、第一・第三群が移動して全体がレトロフォーカスっぽい配置になったりテレフォトっぽい配置になったりします。このとき、光学系の全長はワイ端で1番短く、テレ端で1番長くなっています。しかしF3.5の通しです。

ここで、このレンズをお持ちの方は一度絞り開放に設定してレンズをのぞきながらズーミングしてみてください。何か気づきませんか?

実はこの類のズームレンズは、わざわざワイド側で少し絞ってf/3.5に合わせているのです。

なぜわざわざ絞り込んでまで通しFにしたかを考えてみます。非通しFとはつまり開放F値ズーミングによって変動するということですが、この時代(Zoom Auto 43~86/3.5の発売は1963年)のカメラはNikon FフォトミックやらNikorex Fやらで、測光ではTTL測光がまだその信頼を築き上げていませんでした。外部露出計や勘からASA(固定)・絞り値・SSをもらって撮影します。憶測にすぎませんが、ズーム中開放F値が変わる(=絞り環の数字が「開放から何段絞り込んだか」しか表さなくなる)とまともに露出をとれないために、絞り値が変わらないレンズの方が圧倒的に使いやすいと踏んで「通しF」にしたのだと考えられます。(ただし同年代に発表されたズームレンズでもF値が変わるものがなかったわけではありません。Wide-Zoom Auto 35~85/2.8~4(未発売)など。)ほかの可能性として、ワイド端の画質面の厳しさから強制的に絞ったとも考えられます。

このような擬似通しFレンズは結構存在します。たとえばAi 25~50/4S。たとえばE36~72/3.5。広角スタートのレンズに多めな気がします。

こうした構成のレンズは、カメラのAE化やレンズのCPU化で「本来の」開放を使う、F値の変わるズームレンズへと変化してゆきます。Ai-S代だとAi 35~105/3.5~4.5Sなど、AF ~G代だと AF 28-80/3.3-5.6Gなどが有名どころですね。ちなみにF型最初のズームレンズ、Auto Telephoto-Zoom 8.5~25cmはF4~4.5とわずかですがF値が変動します(カタログ上ではその後80~200/4.5にバトンタッチします)。